前にお話ししたように当院ではアトピーの患者さんも多く訪れます。

長年苦労している患者さんから、赤ちゃんの湿疹も多いのです。湿疹があるからステロイド軟こう。それが日常的な”治療”として普通に行われていることに 抗議したいくらいです。熱が出たから、熱さましという発想と同じです。解熱剤で、病気(感染症)がなおる訳ではありません。使いすぎると、かえって病気が悪化することにもなりかねません。

 

インフルエンザ脳症でそのような 因果関係が統計的に疑われました。Nセイズと言われる鎮痛(解熱)剤、ボルタレン、ロキソニン、 ポンタールなどでは使用すると炎症(サイトカイン系)が高まり、理論的にも感染が悪化するのです。

アトピーでも同じように、ステロイド治療により、病気を悪化、修飾しているということが否定できない側面があります。たとえ少量づつにしても、皮膚からの副腎皮質ホルモンが毎日吸収され、大なり小なりホルモンの過剰な作用がとくに小さい子どもほど顕著にあらわれやすいのです。ステロイドを飲み続けた場合にはなおさらですが、ステロイドを塗布し強力な抗炎症作用で表面上 は一時的に皮膚症状がおさまったようになりますが、からだの内部のアレルギーがおさまっていない かぎり、また皮膚は炎症を起こして湿疹が出現して来ます。

そしてまたステロイドを、場合によっては更に強いステロイドを塗る、、ということを繰り返しているうちにホルモンの全身作用も無視できないレベルになってゆきます。

この間に、自分で作るホルモンの産生能力が抑制され、いわゆるステロイド依存状態になりますので、いっぺんにステロイドを中止すると、リバウンドといって湿疹が激しく悪化、再燃する現象がみられます。弱いステロイドならいいかと言うと、2分の1の作用のものを倍の期間使用したら使用した絶対量は同じことになります。

非ステロイド系の軟膏なら良いかと言っても、あまり効果はなくて、かえってかぶれるという場合もあります。

ステロイドを使用する場合は副作用を起こさないような”上手な”使い方が鉄則であるとされたもの ですが、そのような”極意”ははるか過去のものとなってしまったかのようです。ステロイドの使用を続けている子どもさんでは、アトピーは重くなり、喘息などのその他のアレルギー 症状が激しくなり、免疫力が低下してカゼや中耳炎などにかかることが増え、神経過敏傾向が 著しくなるなどの様々な不調がみられます。  皮膚科学会などから、ステロイドを嫌うあまり、アトピーがひどくなり、効果のない民間療法に高額 な費用を費やしている人が多いことに対して注意喚起がなされています。

皮膚そのものを考えると、入浴をあまりせずに石鹸もあまり使わない人にはアトピーがみられ難い、 赤ちゃんが石鹸でごしごし毎日皮膚の皮脂成分を落とすと、皮膚の防御(バリアー)機能が損われ アレルゲン(アレルギーの原因物質)が侵入しやすくなるとか、炎症が強いときにはステロイドで炎症 を有効に抑えるという治療を全面的に否定するつもりはありません。

 

しかし、内科(私は小児科ですが)の立場からは、からだの内部からのメカニズム、アレルギーから 病態を改善しようと考えるのは当然のことです。  ホルモンの影響を受けやすい子どもではなおさら、そのような基本的な考え方が重要です。 アレルギーがあるからアトピー症状がある。喘息も同じ。出来るならアレルギーのない体になれば いいのです。

食品の添加物を極力からだに取り入れない、季節の栄養価の高い、農薬の残留していない 完熟して収穫したばかりの野菜、くだもの、いも、まめ類、海藻類、穀物、パンは精白していない 全粒粉の穀物を摂るようにしましょう。

北海道のハルユタカの全粒粉のパンなどが本来の栄養のあるパンの味がします。 白米、白い小麦は殆どカロリーしかなく、人間、細胞にとって必要な栄養素が失われているのです。

 

食の話しに脱線しそうなので、話しをもどします。当院では結果的にステロイドを使用してアトピーの治療をしている人はごく僅かです。

漢方薬、軟膏などと栄養の改善、補助により治療をおこなっています。

食事指導も行っています。一部で子どもの食事除去が行われている場合がありますが、原則的にはからだにとって重要な栄養が必要以上に除去されていることについても疑義があります。特定の食事成分でじんましんや、呼吸が苦しくなる即時型アレルギー反応(アナフィラキシー)では その食事成分を除去する必要がありますが、あとでじわじわ湿疹がひどくなるという遅延型アレルギー であるアトピーでは状況が異なります。からだにとって必須の必要な栄養素を出来るだけ摂れるようにすることは健康な成長、発育に重要 なことです。

 

重症のアトピーではさまざまな治療でも対応しきれない場合もありましたが、これらの治療を 組み合わせることで重症のアトピーにも対応できることが多くなってきていることを是非お伝えしたい というのがこの稿の趣旨です。遠方の方でもご相談に応じます。

ながの小児科