抗生物質の知識
昨日もTVで取り上げていましたが抗生物質をカゼに使うのは間違いだ、などとお定まりの報道振りでした。
この手の話にはメディアですら医学の素人の大きな間違い、勘違い誤認識があります。
まず抗生物質は細菌の増殖を防ぐもので、ウイルス感染には効果無い事は、医者の常識ですが、一般の人には必ずしも知られている基本知識なのでしっかり覚えておいて下さい。
その上でカゼという感染症はウイルスが原因であるという定義はありませんのでカゼイコールウイルス感染と思い込みで決めて、だから抗生物質は不要という理屈は完全に間違った論理破綻、論理矛盾なのです。
カゼは1つの病気でも病名でもありません。ウイルスや細菌感染症の初期の症状(咳や鼻水、喉の炎症や発熱など)
を示す病原体を特定出来ない感染症の総称であって特定単独の病気の名前ではありません。例えば溶連菌感染症やマイコプラズマ感染やその他多くの細菌感染症もカゼ症状から始まります。
初期にこれらの原因を特定されている事は殆どありません。症状からみてこれらの感染症の初期症状が疑われる場合に(医者次第ですが)抗生物質が処方されます。
特に子どもの場合は1日2日で感染症が重症化しますので大人の様な悪化したら再受診すればよい様な余裕の無い事も少なくありません。
たちの悪くない軽症のウイルス感染なら数日で治まりますが、免疫機能の確立していない小児では細菌も同時に感染増殖しカゼが重症化します。
小児に限りませんが例えばインフルエンザウイルス感染で肺炎を起こすのは肺炎球菌という細菌が肺炎の原因になります。今までは合併症と言われて来ましたが、実態はより深刻でウイルス感染による免疫機能低下破壊により細菌感染が誘発されるという機序と見做すべきなのです。
最近ではウイルス感染と細菌は最初から同時に感染していて感染症は1つの病によるより複数の感染が同時に起きていることが多く見られます。例えばコロナやインフルエンザと溶連菌の同時感染はめずらしくありません。
この様な場合にウイルス感染によるカゼと思われて抗生物質が使われないと腎臓や心臓などに取り返しのつかないダメージを受ける事になります。
現在厚労省が無駄な抗生物質の使用を減らそうとして
抗生物質を出さない医療機関に報酬を増やしています。
そして抗生物質を使う場合にはペニシリン系抗生物質(、、シリンと言う名前が多い)の使用を勧めています。
その本音は安いから医療費を減らそうというマインドが見てとれます。
特に小児ではペニシリン系抗生物質の特徴として下痢をしやすくて薬疹も相当数で出現するので私は小児には使うべきではないと思っています。
抗生物質不使用で溶連菌感染が野放しになり、家族兄弟他溶連菌感染が拡大し、ベニシリン系抗生物質の使用一択となりペニシリン系抗生物質では効かないマイコプラズマや百日咳、肺炎クラミジア、(検査の出来ないレジオネラ)などの呼吸器感染症を増やす事になったと考えています。
細菌感染の初期に抗菌薬を処方されないと後になって重症化し返って抗生物質の使用量が増え耐性菌も増やす結果になり元も子もありません。
抗生物質は良くないとか不要だとかと言う言説に踊らされると危険な目に遭いかねないので専門家にお任せください。